映画「セラフィーヌの庭」

 “天才と狂人は紙一重”と言われるが、社会が狂人性に怖れて、その天才を葬った例も数知れずあるかと思う。

 1864年に生まれ、1942年に精神科病院で亡くなったといわれる実在のフランス人画家、セラフィーヌ・ルイの半生を綴った映画だが、彼女はその生の中でひとすじに画家の道を歩んだひとではなく、修道院の下働きや家政婦として日々の糧を得、41歳の時に、絵を描くよう守護天使の啓示を受けたという。

 純朴で宗教心は厚いが、知的素養や世事に疎い彼女を見る世間の目は冷ややか。だが、家政婦として仕事をした家で、ピカソの才をもいち早く認めたという美術商ヴィルヘルム・ウーデと出逢ったことから、セラフィーヌの人生は変わっていく。セラフィーヌの斬新な絵画に魅せられたウーデは、貧しい彼女の援助をしようとするのだが…。

 花や木に話しかけているこの映画のヒロインを変だと思わせる場面が出てくるが、おやまあ、私とおんなじじゃーん!と嬉しく思った(残念ながら、天才は与えられなかったようだが)。大きな木や古木を見つけると、つい、この映画のセラフィーヌのように手で触ったり、抱きしめたくなるし、道端の花に「きれいだねえ」と、撫で撫でしてる私は、きっと“ヘンなひと”やろなあ。

 後半、世界大恐慌が起こるが、貧しかった時も、ウーデというパトロンが後押ししてくれた時も、セラフィーヌは“お金が無ければ無いでいい、あれば好きなだけ使う”というスタンスだから、ウーデとの間にひと悶着があり、それが彼女の狂気を追いやっていく過程は哀しい。

 映画に登場する彼女の絵は、主に植物をモチーフにした独創的なもの。世間にノーを突きつけてるゴッホのひまわりのようで、どこか人の気持ちを掻き立てる気色悪さがあって、私は好き!

 セラフィーヌを演じたのは、ぽっちゃりのヨランド・モロー。もう、神がかってますね。監督はマルタン・プロヴォスト。フランスのセザール賞で7部門をがっちり受賞。老年のセラフィーヌが椅子を持って、長い時間をかけて小高い丘に生えている大木のそばまで行き、そこに座るラストシーンは、なんとも心をゆるやかにしてくれる。

 あなたにも素敵がいっぱいありますように。

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